TC Lines

LNG(Liquid Natural Gas)蒸留精製シミュレーター

LNG蒸留精製プロセスに含まれる脱メタン塔、エタン塔、プロパン塔などの設計と運転に必要な単塔シミュレーター(Pyシミュレーター)を紹介します。このPyシミュレーターには正確な気液平衡関係が組み入れられているので、既存の商業プロセスシミュレーターとは異なります。既設蒸留塔の運転条件を変更して生産性を向上させたいときにPyシミュレーターは有効です。

【脱メタン塔に対するシミュレーション結果の比較

Table 1に脱メタン塔に対する理論段数の推算値、および、全縮器で除かれる熱量の推算値をPyシミュレーターと商業シミュレーターについて比較します。既存の商業シミュレーターはP-x気液平衡データを重視して気液平衡パラメーターを決定しているのに対して、PyシミュレーターではP-xのみならずx-yデータを独立に利用して気液平衡パラメーターを決定しています。この理由により、Pyシミュレーターは少ない理論段数でメタンを99%まで濃縮できることをTable 1は示しています。また、全縮器の熱量は部分モル過剰エンタルピーを無視する商用シミュレーターの方がPyシミュレーターより4%程度小さく現れることがわかります。Pyシミュレーターの特徴を最下部にまとめます。

Tabel 1

Comparison of the number of stages (ns) and the heat removed at the total condenser (QC) between the Py simulator and a conventional simulator for the methane (1) + ethane (2) + propane (3) system at 3 MPa with (xD1, xD2, xD3) = (0.99, 0.005, 0.005) and xW1=0.005, where xDi and xWi denote mole fraction of component i in the distillate and the reboiler, respectively.

 

Pyシミュレーターの特徴

多成分系蒸留塔を設計型と操作型についてLewis-Matheson法により計算します。正確な気液平衡関係が組み入れられています。既存シミュレーターでは高圧気液平衡を状態方程式と混合則により扱いますが、Pyシミュレーターでは2成分系の低沸点成分に仮想液体と蒸気圧を設定し[S. Kato, AIChE J., 51 (2005) 3275-3285]、熱力学式を用いて気液平衡関係を表します。また、活量係数の温度依存性から部分モル過剰エンタルピーを計算して液相エンタルピーを求めます。

PerlあるいはVBAで作成されたプログラムはユーザーに公開されます。また、プログラミング学習教材として使われます。

 

全還流蒸留データを用いる気液平衡パラメータの修正

−プロピレン精留への応用−

 

気液平衡の純粋推算法[1]を全還流蒸留データの推算に応用する。この全還流蒸留データは相互作用パラメータなどの気液平衡パラメータの修正に利用できる。既存法では信頼推算が難しいプロピレンの蒸留精製について具体例を示す。

全還流蒸留データの特徴

2成分系定常等温操作に対する全還流蒸留データは以下の特徴をもつ。塔底における第一成分(高揮発性成分)の液モル分率を0.001、塔頂におけるそれを0.999以上とする。共沸混合物になる場合には段間の液モル比の変化が0.001以下になる段数Nまでの0N段間蒸留データが与えられる。段データには塔底から数えた段数(N)、第一成分液モル分率(x1)、第一成分蒸気相モル分率(y1)、圧力(P)、蒸気相エンタルピー(HG)、液相エンタルピー(HL)が与えられる。また、多成分系、および、定圧操作に対する全還流蒸留データも提供できる。

気液平衡パラメータの修正への応用

ユーザーが利用するシミュレーターに含まれる気液平衡パラメータを用いて全還流蒸留データを計算し、本全還流蒸留データにフィッティングすることによってユーザーのパラメータを改善する。本全還流蒸留データが利用する気液平衡(純粋推算法)モデルとユーザーが利用する気液平衡解析モデルは異なる。そこで、ユーザーが蒸留分離において重要と判断する部分を取り出してパラメータフィッテングする。

プロピレン蒸留精製への応用

H2, N2, C2, プロピレン, C3, C4, C77成分からなる原料から高純度プロピレンを蒸留精製することを想定する。この7成分系を構成する各々の2成分系について定温999分離全還流蒸留データを計算する。図1にそのうちの一つ、エタン(1)+プロピレン(2)2成分系に対する段数(N)とエタンのモル分率(x1)の関係を0, 30, 60℃について示す。強い温度依存性が現れている。操作温度が第一成分(エタン)の臨界温度(305.4 K)を超える場合には仮想液体の蒸気圧を用いて解析している[2]。従って、高温高圧における気液平衡であっても臨界点未満にある気液平衡と全く同様に取り扱うことができる。この点で、状態方程式と混合則を組み合わせる既存の全ての高圧気液平衡解析法と根本的に異なる。仮想液体法の利点は、熱力学に基づいて解析できるので、複雑な高温多成分系気液平衡の現象が理解しやすくなることである。

純粋推算法の特長】 純粋推算法は2成分系気液平衡データが存在しない系であっても蒸気圧が既知であれば平衡関係を推算できる利点がある。また、仮想液体を用いると低圧気液平衡データを用いて確立された純粋相関を高圧気液平衡に対してそのまま利用できるという著しい利点がある。

低圧高圧に関わらず、純粋推算法では、活量係数の温度変化から液相部分モル過剰エンタルピーを求めることができるので、生産性に直結する液量変化を推定できる点に注目しなければならない。

データの入手法】 2成分系別に全還流蒸留データが計算される。web上でhttp://tc-lines.comから系を指定し、入手できる。

文献

[1] S. Kato, D. Bluck, Practical applications of a pure prediction method for binary VLE to the establishment of a high-precision UNIFAC, J. Chem. Eng. Data 61 (2016) 4236 – 4244.

[2] S. Kato Prediction of Henry’s constants for alkane/alkane binaries above solute critical, AIChE J. 51 (2005) 3275 – 3285.

E-mail: kato @tc-lines.com 

1 エタン(1)+プロピレン(2)系全還流蒸留における段数(N)とエタンの液相モル分率(x1)の関係、塔底x1=0.001、塔頂x1=0.999 () .